2019年11月01日

ドメーヌ訪問記:ドメーヌ・アラン・マティアス Domaine Alain Mathias / エピヌイユ Epineuil (シャブリ近郊 Chablis)

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シャブリから車で東に20分くらい言ったところにエピヌイユという小さな町がある。シャブリほどの知名度は無いが、地元では赤ワインの産地として知られている。

アラン・マティアスに興味を持ったのは、自然派でワインを造っているという点と、ヴィニュロンの家系ではなく自分自身でドメーヌを興したという点からだった。

シャブリで、ヴィニュロン家系ではなく(つまり相続した畑や醸造所が無く)自分自身でワイナリーを立ち上げた人物といえばパトリック・ピウズが筆頭だろうか。しかしパトリックは畑を所有はしていないネゴシアンだし、実は醸造所も賃借しているらしい。

「農地」としてはあり得ないほど地価が高いと言われるブルゴーニュで、相続や配偶者の所有などによる取得無しでドメーヌを立ち上げるのは非常に困難であると言える。

アラン・マチアスはその難行を成し遂げた人物の一人だ。

彼はもともと数学専攻だったらしいが、ワイナリーで労働者として働き始めた。働きながら知り合いのツテなどで畑を借り始めた。つまり、平日の昼間はワイナリーで勤務し、夜や週末を利用して借りた畑の手入れをしていたということだ。

ワイナリーとして創業したのは1982年。相当な額の借金をしたらしい。エピヌイユ郊外の土地を購入し、ワイナリーを新築した。

現在は約13haを所有し、借金は「ほぼ返済しきった」とのことだ。

現在はビオロジック認証を得ているが、ビオに切り替えた理由は極めて現実的な理由だったという。トップキュヴェの一つである「コート・ド・グリゼイ」はかなり傾斜のきつい斜面らしいが、90年代に土の流出が深刻な問題だった。そこで彼が考えたのが「除草剤の使用を止める」こと。

ーーーちなみに、「除草剤」と聞くだけで嫌悪感を抱く人も多いかもしれない。しかし除草剤を使用することによる現場での作業効率面のメリットは非常に大きい。除草剤を使用すれば、トラクター耕作による除草(年に5回くらい)の必要は無いし、トラクター耕作ではどうしても残ってしまう木や支柱の周りの雑草を人の手で刈り取ったりする必要もない。雑草が無ければブドウの病気やカビのリスクも減るから農薬散布も減るだろう。13haのドメーヌ全体で除草剤の使用を止めたら、一人従業員を増やさないといけないかもしれない。当然ワインの値段も上げないといけない。あなたが飲んでいるそのワインは除草剤なしで造られている、と断言できるだろうか?あなたは「除草剤を使っているワイン」と「除草剤を使っていないワイン」をグラス1杯ずつ注がれたとき、味の違いを言い当てることができるだろうか?僕にはその違いは分からないと思う。ーーー

さてアランの話に戻すと、コート・ド・グリゼイの畑の土の流出を防ぐために除草剤の使用を止めてみたところ、期待以上の効果があったそうだ。そこで彼は除草剤の不使用だけにとどまらず、ビオロジック農法で実践されている手法ももっと取り入れてみよう、と考えた。

ビオロジックへの変換となると、具体的には殺虫剤、化学肥料、農薬、酸化防止剤などの制限が挙げられる。(ちなみにここでも誤解の無いよう強調しておきたいが、ビオワインでも農薬はほぼ100%使用されている。ビオロジック農法で許可されている比較的環境にやさしい農薬(主に銅と硫黄の溶剤)が使われているのだ。)

そうしてドメーヌ全体がエコセールという機関にビオロジック認証されたのが「10年前」ということだから、コート・ド・グリゼイの畑での除草剤の使用を止めてから10年以上の移行期間があったことになる。ビオワインを造ることは簡単なことではないのだ。





ではテイスティングに移ろう。まずは白ワインから。

●プティ・シャブリ 2018
粘土質の強い土壌。非常にしっかりとした果実感があるが、余韻は比較的短く、さらっとした印象。

●シャブリ 2018
石灰質が強い土壌。プティ・シャブリと比べるとやや固い印象。果実感がさらにしっかりと感じられ、ミネラル感も感じられる。

●シャブリ プルミエクリュ ヴォー・ド・ヴェイ 2017
傾斜のきついプルミエクリュだ。この畑は手収獲。豊満な果実実があり、ややトロピカルな印象すらあるのはこのプルミエクリュの特徴である。熟成には陶器のタンク(甕、アンフォラのようなもの)も一部使われている。甕で熟成させることでオリとワインの接触が促され、ブドウ本来の果実味・ミネラル感を引き出すことができるそうだ。


●ブルゴーニュ・トネール コート・ド・グリゼイ 2018
上述の傾斜のきつい畑に植えられたシャルドネ。こちらは100%樽熟成。キンメリジャン土壌で、南向きの斜面という意味で、シャブリのプルミエクリュとほぼ同じテロワールだと語るアラン。確かにシャブリ的な酸・ミネラルが感じられるが、丸く柔らかさのあるシャルドネだ。

赤ワインに進もう。

●ブルゴーニュ・エピヌイユ 2017
熟成は25%ステンレスタンク、75%樽。軽くフルーティなワインで、やや梅っぽい酸が感じられる。

●ブルゴーニュ・エピヌイユ コート・ド・グリゼイ 2017
こちらはコート・ド・グリゼイに植えられたピノ・ノワール。100%樽熟成。黒い果実が感じられ、しっかりとした凝縮感。


シャブリからは少し離れているため注目度は低いようだが、目が離せない造り手だ。特にシャブリ・プルミエクリュは熟成ポテンシャルも高く、ぜひ寝かせて古酒を楽しみたい。赤についてはやはり地味なアペラシオンのため日本ではお目にかかることは少ないものの、コート・ドールなどの有名産地のワインが高価になりすぎている今の状況を考えると、これから注目度が上がっていく可能性も高い。


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[2018] シャブリ (ドメーヌ アラン マティアス )Chablis (DOMAINE ALAIN MATHIAS)



ブルゴーニュ・トネール・ブラン[2016]/ドメーヌ・アラン・マティアス



[2016] ブルゴーニュ・エピヌイユ・コート・ド・グリゼイ / ドメーヌ・アラン・マティアス(フランス ブルゴーニュ 赤)




posted by ゲンキ at 04:48| Comment(0) | ドメーヌ訪問記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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